あれこれと 《 その5 》


今回はSRIファンドがこれまでどうなっていたかを見てみましょう。

先ずは、SRIファンドは運用対象となった企業に対してどのような直接的な影響を与えたのか、です。
SRIファンドでは銘柄選定のために、定期的に( 多くの場合は1 年に1 度 )公開企業に対して詳細な調査を行い、評価( 格付け )します。( エコファンドの例ですと、「 エコロジカル・スクリーニング 」 の基礎となる部分です。)
この評価結果によって、ファンドに組み入れられるか、外されるかが決まりますので、各企業は自社の評価がよくなるように環境や社会に配慮した行動を取ります。株式公開企業にとっては、ファンドに組み入れられる ( = 自社の株式を買ってもらえる ) ということは株価維持対策上とても重要なことです。


次は、日本におけるSRIファンドへの投資状況です。
環境省が発表した「環境と金融に関する懇談会」報告書に書かれているように、日本でのSRIファンドの残高は微々たるものです。 「 何故なのか ? 」 ということについていろいろと言われています。詳細は報告書を読んでいただくとして、

  • 環境配慮というのは日本ではなかなか実感( 体感 ) が伴わないため、SRI投資という行動にまで結びつかない。
  • ITバブル崩壊の影響で、初期SRIブームの頃( 2000 年頃 )に設定されたファンドのパフォーマンスが悪くなったことよりSRIファンドは 「 儲からない 」 というイメージがある。( ※ 最近は株式市場が堅調で、かなり持ち直してきました。念のため。)
  • 「 SRIはほんとうに社会の役に立っているのか ? 」 に対する具体的な答えがない。つまり、「 投資した結果がどうなったのかを投資家へフィードバックする仕組み 」がないため 「 SRIの理念は判るが、結果としてどうなるのかさえ判らないものに大切な自分の財産をそう簡単にSRIに廻せない 」 ということでしょう。

最後に、投資家の状況です。
ここ最近の好調な株式市況のおかげで 「 環境ファンドが1年で倍増 」 しているという報道があります。これは運用成績 ( パフォーマンス ) がよいからで、ほんとうの意味でのSRIはどうかなと感じています。
当初のブーム以来、SRIの理念を持ってずっと投資をしてくださる方はいらっしゃいますがなかなかその裾野が広がってこない感じです。( 儲かりさえすればよいという投資家はたくさんいるようですが…。 )

「 投資してくれたお金は、会社を、ひいては社会を良くするためにこんなに役に立ってますよ。」 と示してあげることができれば、「 単にお金儲けだけではなく社会の役に立ちたい 」 と思ってはいるけれども SRI投資につきまとう胡散臭さを拭うことができるのではないかと思います。


参考までに評価会社の方たちの 「 パフォーマンス以外の評価軸 」 についてのご意見を紹介します。

  • ○○○○○スター:「 有効かもしれないが商業ベースには乗らないと思う。」
  • インテグ○○○○:「 パフォーマンス評価だけで充分。そもそもSRIに優れた会社は業績が良くなって株価も上がるということ。」
  • ○○○バンカー:「 欧米ではそんなことなどしていない。」
  • ○コンサルティング:「 評価結果よりも、評価のプロセス・透明性に問題あり。今のままではどんな指標を使っても意味がない。」
  • ○○総合研究所:「 評価をオープンにすることが必須。」


( まだまだ続く )

SRI あれこれと 《 その4 》 はここです。
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