難しいのは納得してもらうこと


「 正論、善人 」これが一番始末が悪い。
CSRの議論で多いのがこれです。いわゆる学識経験者、正義のNGO・NPOコンサルタントなどの先生方のおっしゃることは正論であり、それなので誰も正面きって反論はできません。だから 「はい、分かりました 」と言いますが、本当は分かってなどいないのです。「 もういいから、それ以上言わないで 」と話を打ち切るために 「 分かりました 」と返事をするのです。

ここに悲しい誤解が生まれます。先生たちは自分の言っていることが理解されたと思い込むのですが、実は何の役にも立ってはいません。ほんとは状況は何も変わっていないのです。そこで先生たちは「 なぜあなたたちは言うことを聞かないのか 」と責めます。もしくは 「こんなにもの分かりの悪い会社など二度と相手にしたくない 」、 「 自分はこんなに一生懸命なのに、この会社ときたらちっともCSRというものが分かっていない 」などと曲がった正義感がどんどん生まれてきます。


先生たちにとって正解を出すことは難しいことではありません。ベストプラックティスとか言って、後付で理論化した事例がわんさかあるからです。「 このとおりにすればあなたのところもうまくいきまっせ 」と彼らは言います。
でも難しいのは、それを納得してもらうことです。納得しない限り実践はあり得ません。先生たちは100点の答えを勧めますが、相手が納得しない100点の答えよりも80点の答えを出して納得して実践してもらう方がうまくいきます。先生たちの仕事は、知識をひけらかすように100点満点の答えを出すことではないのです。相手が納得して少しずつでも実践していくようにすることなのです。今まではこうやってうまくいかなかったけれど、こんなふうにすればうまくいきそうな気がするからもう少し頑張ってみよう、と相手に思ってもらえることが必要なのです。
正解を出すのはある意味冷たい行為です。相手をがっかりさせることもあります。そんな時にはもう一度元気を出してもらうことが必要なのです。