空也のもなか

名代の最中



空也のもなか 」は今となっては予約なしでは手には入らぬ、幻のお菓子である。
銀座は並木通りのビル街にちょこんと佇むお店は気をつけないと見落としてしまいそうなつつましやかな店構え。夏目漱石林芙美子の作品にも登場する名代の菓子は、有名人御用達のクチコミや雑誌や本で紹介されたために、いつしか予約販売しかされなくなった。


箱を開けると、ものすごく香ばしい芳香が部屋に広がる。小振りでややひょうたん形をしていて、焦がし皮の中にずしりとした小豆あんがたっぷりと入っている。もち米皮は香ばしくサクサクとした歯ざわりで、ボロボロ崩れない。しっとりとした重さがあり甘味を抑えた小豆あんとの組み合わせが絶妙である。

焦がし皮になったのは、この店の初代が、友人であった九代目団十郎から火鉢であぶった最中を出されたことがきっかけだという。