他人の頭の上で平気で新聞を大開きする


帰宅時の電車で座って本を読んでいると突然に目の前が暗くなった。新聞大開きオヤヂの出現だ。
オヤジは満員電車のなかでも平気で新聞を広げる。8面畳み読みという伝統の技を知らないのか、両手でおもむろに開く。そして老眼がきているので両手を前方下方向に突き出した格好で広げた新聞を読む。紙面の下のほうに書かれた記事を読んでいるときには傷害事件すら起こしかねない。山折になった新聞の先端が座っている人の頭に突き刺さるのだ。しかし、新聞の先端にまで気が回るオヤヂはいない。細部に神は宿らないのだ。
「 あの、新聞が私の頭に突き刺さっているのですが…」とでも言おうものなら、ムッとした顔でこちらをにらみつける。「 そこに座っているオマエが悪い! 」と。
でも何故、夜の帰りの電車の中で朝刊を、わざわざ大きく広げてまで読むのだろうか。謎だ。