内部統制とビジネスは水と油

2008年4月から施行のJ−SOX法( 金融商品取引法 − 財務報告に係る内部統制 )のおかげで、今、公開企業はその対応に大わらわである。
J−SOX法で求められている内部統制とは、会計処理において不正やミスが起きないための仕組みである。具体的には、専門の管理部署を設置して社内をチェックさせたり、対象となる業務を文書化して( 会計数字につながる業務だからほとんどのものが対象になる )、誰でもがそのとおりに業務を行えるようにすることとなる。


決算数字に表れる企業活動の成果を正しいものにすることは重要だ。このような仕組みの必要性を否定するわけではないのだが、現場には不満が渦巻いている。理由は、やらされ感である。これまで現場の工夫でやってきたことは全て否定され、決められた通りの手順でしか仕事ができなくなる。「 いちいち他人のチェックを受けなければいけない 」、「 文書化するのが難しい処理がある 」、「 内部統制が有効に働いているのかを、さらに監査人がチェックするための時間と手間をとられる 」などなどの声が上がっている。


しかし、内部統制がビジネスの現場とソリが合わないのはあたりまえのことなのだ。内部統制は単に会計の発想、つまり 「 会計数値を正確なものにするため 」だけにあり、どのようにビジネスを廻していけば価値を生み出せるのかという考えはないからである。


会計が表現する数字には説得力がある。「 数字が全て 」だという人もいる。そして会計は科学でもある。だから反論できる人はそうそうはいない。でも、ビジネスは科学だけではやっていけないのも事実である。