個人のやったことです。


社員のインサイダー取引を摘発された野村證券社長の記者会見での発言である。
法人として責任を問われることを回避しようとしているのだろう。社員が巧妙な手口によって行ったものであり、野村證券としては内部管理として自社でできる限りのことはやっており、あとは社員の倫理観とか、厳罰による威嚇などによって統制するしか方法がない、との主張も分からないではない。


しかし、社員のインサイダー取引を阻止できなかったのが法人としての責任がないことにはならない。
この問題は、インサイダー取引問題だけでなく、利益相反関係にある相手方企業や関連企業にも情報が「 筒抜け 」になる可能性があるということだ。そのような事態が現実化すると、インサイダーどころの話でなく、顧客企業に対して大きな損害を与えることになるわけであり、「 付随業務 」として投資銀行業務などを行う証券会社全体の「 利益相反取引の禁止 」というガバナンスと内部管理体制構築の問題なのである。


「 いち社員のやったことだから」と1年半ほど前に記者会見した某大手証券会社は、上場廃止になろうかという大騒ぎとなり、結局は外資に吸収されてしまった。
渡部賢一野村證券社長は初期対応を誤ったと思う。