千歳

祝い菓子



日本三大銘菓、長生殿で有名な金沢の森八の「 千歳 」は、たっぷりのこし餡をやや固めの求肥で包んだお菓子。紅と白の、阿波の和三盆糖を振りかけた、めでたいお菓子である。紅色は山形産の本紅で染めているそうな。



なかに包まれたこし餡は丹念に練り上げられてしっかりとした独特のコクと深い甘みを醸している。これを包む皮は求肥とは思えない意外なコシがあって、不思議と舌の記憶に残る。
古くは「千歳鮓(ちとせすし)」と称し、十六世紀、森八家の始祖亀田大隅が加賀金沢付近の一向宗徒を治めていたことから森八家家伝の保存食となる。加賀が前田家の治世となって平和な時代に移ると、徐々に形を変え、見た目にも端麗な銘菓に姿を変えていったと伝えられている。森八家には、文政年間に茶道遠州流八世小堀宗中師の直筆になる「 千歳鮓 」の木看板が保存されている。