おとし文

恋文



昔、身分の違う御武家様に恋をした女性がおりました。かなわぬ想いを筆にしたためたものの、恋文を渡すに渡せず丸めて川に流したその様を 「 おとし文 」といいました。


そのはかない恋文を想わしたお菓子が東京銀座 清月堂本店の「 おとし文 」。
黄味あんをこしあんで包み蒸気をあてたお菓子。ゆでた黄身を裏ごししてふるいにかけ、じっくり丁寧に北海道産小豆のあんとまぜあわす。あんに徳島産の和三盆を加えることで、品のある甘さが出る。出来上がった黄身あんを自家製のこしあんで包み、強めの蒸気で蒸す。蒸すことであんの味をまろやかにし、しぐれ( ひび割れ )を作る。綺麗なしぐれを作るために、熟練の職人がその日の湿度や蒸す前のあんの状態などみて手作業で蒸していく。


卵の黄身の香りがふわっと口いっぱいに広がり、外側のこしあんの生地がほろほろと溶け、中の黄身あんのしっとりと上品な甘さが切なく口溶ける。