こだわり

「 判る人だけ来てくれればいいんです。それがオーナーのポリシーですから。 」


ワインはおいしい。でも、このもてなしの心のなさはどうなんだろう。自著本で自慢していたイングリシュガーデンは枯れるにまかせたまま。テラスの腐った床はロープを張って立ち入禁止にしている。手すりは塗装が剥げ、サビている。完成した頃は確かにすばらしかったのだろうに…。


ここは、新潟にある知る人ぞ知るワイナリーである。南米から濃縮ブドウ果汁を仕入れて日本国内で醗酵、もしくは出来上がったワインそのものを輸入して、国内でビン詰めをするということを白昼堂々と行いながら「 ワイン屋 」 を名乗っている会社が今でも多いなか、理想のブドウ作りを求めて新潟県に作られた「 本物 」 のワイナリーと言われている。年間18万人以上のお客様が訪れるそうだ。
オーナーは、自分の目がしっかり行き届く範囲内でのワイン生産でない限り自信を持って世に出せる品質を維持することができないことから、やみくもに畑を広げて余分に儲けを出すことはせずワイナリーとしての適性生産量の範囲内で品質向上を目指すことをポリシーとしている。
ちなみに、ワインを作ることではなくワインを売ることを先に考え、極論すれば「 ワインさえあれば、ブドウなんていらない 」 といったレベルにまで達してしまい、食用ブドウの果汁でワインを作っても平気な顔をするようになる。日本では、ワイン用のブドウを使ってワインを作るのではなく、食用ブドウを流用して作られるワインがほとんどだった。ワイン会社として有名な会社であっても、ワイナリーの蔵の中にあるタンクの総容量よりも、一年間で販売する出荷量が上回るような「 ねじれ 」 がおき、他から出来合いを買ってきて詰め替えるなどして自社商品のようにして売っているようなものも出回っているのだ。


確かに、ワインはおいしかった。



本業はワイナリーなのだから観光客が来ることは迷惑なのかもしれない。でも…、なのである。オーナーの著作やホームページを見たらどうしても期待してしまうのです。
7haの広大なぶどう畑と良く整備されたイングリッシュガーデン。ここでしか味わえないワイン。「 越後もち豚 」 を使った本場ドイツ製法の自家製のソーセージやハムなどの燻製。岩室地区後藤牧場の新鮮なジャージー乳で作ったジェラート。添加物なしの自家製パン。スパやサロンのある温泉宿泊施設。ねっ、すごく期待するでしょう。


でも、挨拶を返さない従業員さん、未舗装で土埃がモウモウなのに打ち水をしていない道路や駐車場。朝早く着いて開店時間前だったため中に入れてもらえなかったのに関係者らしき人がコーヒーを飲んでいたカフェ( 外から丸見えですよ )。畑の端に野ざらしで放置されている農薬のたくさんの空き缶、そしてとどめが冒頭のマネージャー氏の言葉でした。


引用文献:「 僕がワイナリーをつくった理由 」  落 希喜一郎、ダイヤモンド社