あれこれと 《 その2 》
2005年10月、UNEP-FI ( 国連環境計画金融イニシアティブ ) は、それまで議論が続いていた受託者責任に関しての研究報告を公表し、ESG ( Environmental, Social and Governance : 環境、社会、コーポレートガバナンス ) の要素を投資意思決定に組み込むことは受託者責任とは矛盾しない、とした。
そして2006年4月、「責任投資原則」 ( PRI :Principles for Responsible Investment ) が公表される。
この原則は、世界各国の年金基金を運用する機関に署名を要請しており、署名した機関は受託者責任に反しない範囲で以下の6つことを行うことを誓うことになる。
- ESGの要素を投資分析と意思決定のプロセスに組み込む。
- 株主権の行使においてESGの要素を勘案する。
- 投資先に対してESGに関する適切な開示を求める。
- 資産運用業界に対して、この原則の受け入れと実行を求める。
- この原則の実行に関して投資家間で協調する。
- この原則の実行や進行状況に関する自身の情報公開を行う。
この原則によって年金資産の多くがSRIへと向かうことになる。
SRIとは、財務的側面を評価するだけでなく投資先事業の社会的側面や環境的側面も評価して行う投資行動のことである。
1920年代に英米のキリスト教会を中心に始まり、1970年代には公民権運動、反戦運動、反アパルトヘイト運動、環境保護運動などの社会運動と結びついて本格化した。
その後アメリカでは90年代後半の資本市場全体の拡大に伴って、SRIで運用される資金量も拡大した。
ヨーロッパでは90年代にスイスでエコエフィシェンシーファンドが登場し、環境問題への配慮は資源効率の改善、環境リスクの低減、企業イメージの向上などによって企業価値に貢献するという論理を実践した。2000年代にかけて、この論理はCSR全体に拡張され、SRIとはCSRを評価し、CSR活動に優れた企業に投資することはリスク低減と収益性向上に資する、と主張されるようになった。
その結果、大手金融機関は商品ラインアップの一環としてSRIに取り組むようになりSRIは裾野が広がってきた。これがSRIのメインストリーム化といわれる歴史的動向である。
2005年時点のアメリカのSRI資金量は2兆2900億ドルと言われ、これは全米で運用されている資金量の11%に相当する 。ヨーロッパでは2003年時点で、機関投資家向けのSRIが3360億ユーロと試算されている 。