評価会社は信用できますか


サブプライムローン問題で格付け会社に調査が入っている。恣意的な格付けを行った責任が問われている。欧州連合(EU)も、ポルトガルポルトで開いた非公式財務相理事会で、米国の低所得者向け住宅融資(サブプライムローン)焦げ付き問題をめぐり、格付け会社に対する調査に乗り出すことを申し合わせた。 米国でも議会が格付け会社の監督強化に向けた審議を始めたほか、日本の金融庁も規制に動き出すなど、日米欧で格付け会社の責任を問う動きが目立っている。

「 サブプライム危機 格付け会社も共犯? リスク過小評価に批判 」


昔、邦銀がムーディーズの格付けに振り回され苦労した時には、今回のように格付け会社側の問題点が指摘されることはなかった。あの頃ムーディーズ様は専制君主であった。人々は格付けの意味をほとんど理解せずに、頼んでもいないのに勝手に格付けされた、AとかBとかの記号だけを見て右往左往していたのだ。

多くの投資家や評論家は、今でも、格付けが何を意味するのか、格付け会社はどのように活動しているのか、ということをほとんど理解していないように見える。 格付けの基本は「 信用リスクを反映する 」ということだ。信用リスクとは債務を返済する能力と意思のことである。格付けは対象債務の流動性潜在的価値、ボラティリティを含んではいない。したがって格付けだけをベースにした投資は、基本的に誤りなのである。流動性とは換金性のことだ。たとえ高格付けの債券でも発行総額が少ないと流動性は低く、換金するのにリスクを伴う。

ほとんどの人たちは、AAA/Aaaは絶対安全、BBB/Baaは多少リスクが有り、CCC/Caaは手を出さないほうがよい、と考えているようだが、実際はもっと複雑である。信用リスクを測定する方法は沢山あり、ムーディーズとS&Pとでは信用リスクを測定するのに異なったアプローチを採用している。
結論を言うと、格付け自体にはそれほどの意味はなく、ポイントになるのは分析の背後にある一連の仮定である。幾つかの仮定はもっともだと思えるものであるが、通常ではとうてい考えられないような仮定もある。したがって格付けを、結果としての記号だけをみても、ほんとのところはよく判らないのだ。 サブプライムローンの例を端的に言うと、「 住宅価格は永遠に上昇し続ける 」という仮定があり、それをもとに債券化された金融商品は高い格付けがされたのである。


重要な点は、格付け会社は当局が想像する以上の力を持っているということである。債券が投資適格であるかどうかということは機関投資家にとっては決定的に重要なことである。投資非適格銘柄になると特定の機関投資家はそれらを売却しないといけない決まりになっているからだ。反対に、高格付けの債券だと安心して( 判断を格付け会社という他人任せにして )投資ができるわけなのである。
今後、格付け会社に関する監督が強化されるときには、その判断プロセスの開示が要請されることになるだろう。


そして以上のことはSRI評価においても同じ構造にある。
つまり、どの評価会社も自社がブラックボックスで行ったことの結果しか開示しておらず、プロセスが正しかったかどうかはその評価会社しか知り得ないため、都合のよい恣意的な評価をする可能性が常にあるということなのだ。