アメリカのモノマネから脱却しよう


アメリカ式のコーポレートガバナンスや経営術、会計方式などが理想であるとして、グローバルスタンダードだと誤魔化してまで導入してきたのがわが国の官僚や学識経験者である。


「 企業は株主のもの 」とか、ROE( 株主資本利益率 )経営だとか、時価会計だとか、減損会計だとか、これらは全て 「 企業を時価で、できるだけ高く売るために評価し易くする 」ための手段にすぎない。そこでは、社会に役立つ会社にするにはどうすればよいかではなく、驚くほど多額のストックオプションもらった経営者を含む、株主が、一番手っ取り早く儲けを手に入れるにはどうすればよいかだけをひたすら考えているのだ。これこそがアメリカ式企業経営の実態なのである。


マネーゲームとして企業経営をしているアメリカ経済。繰り返される企業買収や日常化したリストラ。財務的なテクニックによる見せかけのROE向上。それを後追いしている日本は、必ずもうすぐ行き詰まる。景気動向に踊らされることなく、真に豊かな社会を作るためには、ほんとうは何が必要なのかをいま考えなければ日本に未来はないと思う。


アメリカ式コーポレートガバナンスの要は 「 企業は株主のもの 」という考えだ。これを突き詰めると、企業の目的は株主にとって価値を上げること、すなわち 「 株価を上げること 」である。だからエンロン事件は、短期的に時価総額を上げることが優れた経営と見なされる風潮のもとで起こるべくして起こったわけで、それをSOX法くらいで規制できると思うこと自体ちゃんちゃらおかしい。根本の考え方が間違っているのだから。

アメリカ式経営術で最も重視されるのはROEである。資産を圧縮することが一番手っ取り早くROEを改善する方法である。このため、工場や研究施設を売却するということを平気でやってしまう。製造業がこれをやるとどうなるかは自明の理である。よってアメリカの製造業はほとんどが死に絶えた。世の中に役に立つためによい製品を作ったり、よいサービスを提供することは二の次なのだから仕方がない。

そんなアメリカ式経営術を支えるのがMBAである。ビジネススクールでは数値目標が全てであると教える。あらゆるものを数値化し、損得で判断する。
物事を何でも数値化するとそれが目的化してしまう。手段と目的の逆転という現象を引き起こす最大の原因はこの数値化にある。人は物事の本質ではなく、目に見える数字の大小で判断してしまうのだ。だってそれが判り易いのだから。


フォードが欠陥車事件を起こしたとき、MBAホルダーの経営者たちが検討したのは「 犠牲者への保障金と欠陥車をリコールして改修する費用のどちらが安いか 」だったことは有名な話である。
この2つは比べられるものでなくどちらもすぐに手を打たねばならないことなのに、そんなことさえも判らなくなる。


どうです、それでもアメリカのマネをしますか?