目標の数値化


日本公認会計士協会CSR目標の数値化に向けての報告書を発行している。

『経営研究調査会研究資料第1号 CSR情報に関するKPIの選択とその開示― CSR情報におけるKPIマネジメント活用に向けて ―』


(前書きから抜粋)
「本研究資料は、KPI( Key Performance Indicators、主要業績評価指標 )の適切な選定に当たって、重要課題の抽出に資するとされる「ステークホルダーエンゲージメント( 利害関係者との関与 )」の考え方を整理することで、CSR情報開示に関してより一層の具体的な提言を行うものであり、海外企業のCSRレポートの開示事例等の検討を通じて、ステークホルダーエンゲージメントによって抽出された重要課題についてどのように活動が実施され、その結果としてKPIがどのように開示されているのかについて紹介しております。」


日本公認会計士協会は、CSR活動や、CSRレポートの透明性を確保するために統一的な数値評価指標を設定し、KPIとしてベンチマークすべきだ、としている。これをすることによって会社や業態の差異を問わず比較評価することができるからだ。財務データを分析評価する会計士さんにとっては、CSRも同様な手法で評価できるわけで、非常に好都合なことである。

そのための基準として、CSR報告書の国際規格であるAA1000を作成したアカウンタビリティ社が発行する「ステークホルダー・エンゲージメント・マニュアル」や、GRI( グローバル・レポーティング・イニシアティブ作成のガイドライン( 第三版 )について紹介している。

確かに基準と評価指標を定めればCSR情報の開示には一定の信頼性が担保されるでしょう。


でも、思います。CSRって数値指標だけで表していいのですか?
KPIが定められたとたん、まちがいなくKPIを改善していくことが目的となります。それは、ROE( 株主資本利益率 )が経営指標となったとたんに企業の目標が「 株価を上げること 」にすり替わったことからも、容易に想像がつきます。

そもそも、誰が何のために、会社や業態の差異を無視した横並びのCSR評価指標を必要としているのでしょうか。出てきたKPIは、きっと企業格付けやランキングに使われるでしょう。企業を評価する記号として。そこでは理念も理想も必要としない人たちが、単にマネーゲームの判断材料に使う場面しか想像できません。
そして、毎年KPIを良くすることだけにしか意識の向かなくなった企業は、何のために自分たちは存在しているのかさえ忘れてしまうでしょう。手段と目的の逆転という現象を引き起こす数値化に、私は大きな懸念を抱いています。