大衆を煽動する


アル・ゴア氏にノーベル平和賞とのニュースに、以前に他のサイトで書いた記事を読み直した。氏のように地球温暖化の原因をひたすら二酸化炭素のせいにして、実際には今世紀に到底起こりえない海水面の上昇を映像化し大衆を煽動する感覚には怒りを覚える。氏をはじめとする「二酸化炭素低減至上主義者」によって、トウモロコシはアルコールとなって代替燃料に充てられ、食べるものが手に入らない人々が一方で生まれる。このような人にノーベル平和賞なのだから、世も末だ。



< 当時の記事 >

アル・ゴア氏は環境問題の宣教師として世界を駆けめぐり地球温暖化対策の推進を説いています。その善玉ぶりは日増しに膨れ上がりつつあります。

不都合な真実 ( An Inconvenient Truth ) 」 という映画を観て( 日本語版書籍がランダムハウス講談社から2,940円で出ています )、そのインパクトに改めて地球温暖化に対する危機感を実感したという人、そして氏の、議会に温暖化問題を提出しても世の中は動かずそして選挙に敗北する( いまのブッシュ大統領と僅差で大統領になりそこねた )という挫折、そしてどん底から再出発するというところ、一つ一つの町や村に出向いて自分で話して回り他人の講演でひとつでも疑問があれば徹底して調べ上げるという行動に地道で不屈な努力の人としての生き方に感動した、という人も多いようです。


しかし氏の主張には以下のような不都合な事実もあります。( 「 ウォールストリート・ジャーナル」 紙 2007年1月18日号より )


◎ 海面上昇の想定が度をすぎている

「ゴア氏は地球温暖化による海面上昇は6メートルとし、海面が6メートルも上昇するとフロリダやニューヨークがどんなに大変なことになるか」と鮮烈なイメージ画像でもって訴えかけている。
しかし、国連の専門グループによる気候予測では、「今世紀中の海面上昇は30センチくらいであろう」という。じつは、過去150年間で海面はすでに30センチ上昇している。それと同じことが今後 100年間に起ころうというのが国連の専門グループの予測だ。
予測を超えたケースを想定するのが悪いとは言わないが、それにしても国連の専門グループの予測を20倍するケースを描いてみせるとは、あまりにバランスを欠いてはいないか?


地球温暖化によるマラリア発生はウソ

ゴア氏によれば、「アフリカ・ケニアのナイロビは、かつては涼しい気候でマラリアが発生しなかったのに、いまや地球温暖化によってナイロビでマラリアが起きるようになった」という。
しかし世界保健機構(WHO)によれば、「現在ナイロビではマラリアは発生していない。逆に、いまより気温の低かった1920年代、30年代にはマラリアが定期的に流行していた」とのこと。


南極大陸には雪が積もり続けている

南極で温暖化が進行しているのは、全体の2%の地域である。残りの98%の地域では過去35年間というもの気温は下がっている。国連の専門グループも、「今世紀中、南極大陸の降雪量は増えるだろう」と言っている。
ところがゴア氏は、温暖化が進行するわずか2%の地域の写真をひたすら紹介してみせる。残りの98%の事実には触れないで。


南氷洋では氷が増えている

北極の氷が融けつつあるのは事実だが、逆に南氷洋では氷が増えている。
しかしゴア氏は、そういう不都合な事実には触れようとしない。


◎ 温暖化は死者を増やすのか、減らすのか

平成15年のヨーロッパの猛暑で3万5千人が死んだことをゴア氏は挙げて、「地球温暖化は既にして人命の問題だ」と強調する。
しかし、地球温暖化で冬の寒さの厳しさが和らぐとすれば、それは人命を救うことにもなる。現に英国では、地球温暖化による猛暑で2千人が死ぬという予測とともに、風邪で死ぬ人は2万人減るだろうという予測が出ている。


ゴア氏の説は一面的すぎないか。
国連の推計によれば、ゴア氏の言うとおりの政策を実施しようとすると、21世紀中に 553 兆米ドル(=6京5千兆円!)のお金がかかる。(原文では“$ 553 trillion”) 同じお金を使うならもっと役に立つ使い方があるでしょうに。



話は変わりますが、慶応大学の西岡教授が唱えた「気候七百年周期」というものがあります。

西岡教授は、気候脈動説を唱え「気候と文明」の著書を出したアメリカのハンチントン・エール大学教授の流れを汲む学者で、人間にも歴史にも気候が大きく影響してきたといいます。そして一定の法則を発見しました。それを気候七百年周期説として学会で発表してハンチントン教授からも絶賛を浴びています。

日本の歴史は縄文時代に母系制の氏族社会が成立してから三千年。貝塚や竪穴住居、縄文式土器をみると、その時代の気候が分かるという。土器の底面に葉痕があるものを”葉底土器”というそうだ。
西岡教授が学生時代に福島県郡山市にあった円壽寺で弥生式土器の底面にトチノキの葉痕を発見した。トチノキ岩手県盛岡市あたりではみられるが、郡山市内で発見されたので不思議に思ったそうだ。郡山市の平均温度は13度、盛岡市の平均温度は9度、4度の差がある。


そこから弥生時代郡山市周辺はトチノキが自生する9度ぐらいまで温度が低かったのではないかという仮説を立ている。その後、西岡仮説を裏打ちする発見が続々と現れた。東大人類学教室は埼玉県の真福寺の泥炭層遺跡でトチの実を発掘、早大直良信夫教授は「関東地方は今の東北地方と同じような気候があったらしく、クルミトチノキなどが生えていた」と発表している。弥生時代は寒期だったのである。戦前の話だ。


本格的に西岡教授が気候と歴史の相関関係に取り組んだのは戦後のことになる。考古学資料はじめ古文献の中から興味ある資料を得たが、客観的な資料として老樹の年輪を原簿で調べたという。暖期には樹木は生長するから年輪の幅が広くなり、寒期には生長がとまるから幅が狭くなる。
そして過去三千年の歴史の中で寒暖の波が四回繰り返され、一回の周期が七百年という説を確立している。

「 寒暖の歴史 気候七百年周期説」 西岡秀雄著、発刊:好学社


ちなみに、今から 七百年前の室町時代がやはり温暖で、江戸時代末期が非常に寒かったということです。
現代はサインカーブ上の一番変化の激しい時で、「 これからまだ 二百年くらいは暖かくなり続ける。」ようです。


長々と書いてきましたが、地球温暖化は通り名で、「 気候変動 」という言葉を使って専門家たちは危機感をあおります。そして、危機感をあおる動きは日本でもいろいろなメディアで始まっています。シンポジウムなどではみんなが泣き出してしまうくらいのものもあります。
しかし危機をあおっても感覚が麻痺するだけですから、普通の人たちが関わることのできる、長い目の取り組みが必要なのだと思います。



引用文献:
国際派時事コラム「商社マンに技あり!」187号 (泉 幸男)
杜父魚文庫ブログ 2006.12.04 Monday (古沢 襄)
循環型社会ネットワーク研究所 ML (上岡 裕)