幸せだなあと感じながら生きている


バーテンダーの方が書かれた本を、たまたま2冊続けて読みました。
1冊は 毛利 隆雄 さんの「 マティーニ・イズム 」です。目指してなったわけではないバーテンダーという職業にやがて真摯に向き合い、「 技は神様、心は仏様 」といわれるようになった方です。お客様に 「 今、最高の一杯を飲んでいただく 」 と一期一会の気持ちを込めてお出ししたものは、 「 グラスのなかに仕事と人生が積み重ねられた 」 と評されます。そしてこの本に寄せられたお客様からのエールもまたとても気持ちのこもった文章なのです。

もう1冊は、「 女性を癒す女性の活力充電の場 」 というコンセプトを作り、ニュースレターやセールスレターなどのいわゆるマーケティング手法を駆使して大評判となったというお店の方が書かれたものです。各種のトレンディ本や日経MJなどの専門誌にも大々的に取り上げられて大成功しているとのことなのですが、こちらのお店に行ってみたいとは私はどうしても思えませんでした。自分のことしか、お客様を集めてお金を儲けることしか考えていないのが行間から伝わってくるのです。

マティーニ・イズム 」出版社からの紹介


この本は当初、子供の頃から酔っ払いが苦手で、お酒を一滴も受け付けなかった毛利隆雄さんが、なぜ日本はもとより世界からも認められるバーテンダーになれたのか、という格好の良い成功物語になる予定でした。


ところが、心身ともに拒絶反応を示してしまう"お酒に関係する仕事"に就いてしまったために、はじめの十数年は不安や迷いが夢や希望を圧倒。人生をカクテルにたとえるなら、毛利さんはバー業界において、まずくなりそうな材料しか持ち合わせていなかったのです。


しかし、いろんな知恵や技術をカウンターの中で教わり、さまざまな出来事や人々との出会いが混ぜ合わされていくうちに、振り返れば「幸せだなあ...」と感謝の気持ちが沸き起こってくるほどの、おいしい人生に仕上がっていました。


何が人を一流へと導き、人生という名のカクテルを"至福の一杯"に変化させてくれるのか----。この答えこそが「 MARTINI−ISM ( マティーニ・イズム ) 」の核心であり、この本をお読みくださるすべての方々への贈り物です。



★ 当書籍は、バーテンダーの仕事やお酒についての専門書ではありません。バーテンダーというひとつの職業を極めていくなかで高度に磨き上げられてきた、生き方・考え方の書です。


★ お酒が好きな方々はもちろんですが、お酒の飲めない方々にも読んでいただきたい。この本が、成人している方々から、高校生や中学生といった未成年の方まで、多くの方々の人生をおいしくする、一滴の材料ならぬ一冊になることを願ってやみません。

引用文献: マティーニ・イズム 」 毛利 隆雄 著、たる出版