お客さま、それはご婦人用です


これも十数年前のこと。奥さんがインフルエンザに罹り高熱を出して寝込んで四日目。替えの下着がなくなったので買ってくるように頼まれた。私は近所のニチイ( 今は買収されてサティになっている )へと出かけて行った。
さすがに女性の下着売り場に足を踏み入れるのは恥ずかしい。キョロキョロしないようにと心がけ、でも、いったいどこに何を置いてあるのか知らないので適当に目線を流しながら歩いていた。

目的のモノを探しあてて手にした瞬間であった。 「 お客さま、それはご婦人用です。」と声をかけられたのである。『 そんなことはわざわざ言われなくても分かっている。そのために来たのだ。』 と思いつつその店員さんの顔を見たとき、全てを悟った。

恐らく、私が売り場に入ったときからずっと目をつけていたのであろう。この挙動不審者は万引きでもするように見えたのにちがいない。
そして私がレジへ行って代金を払うまで、ご丁寧にずっと後ろから付き添ってくれた。