年金官僚たちの言語道断の非道


当該箇所を文芸春秋記事より抜粋。

 (前略)

「当時、厚労省名寄せプログラムが開発できなければ、5千万件の中身の精査もできないと繰り返していた。官邸サイドは完璧に解明できなくても、せめて性別だけでも報告するよう、さんざん厚労省をせっついたのですが、できないの一点張りでした」(官邸関係者)


 年金官僚達が、「精査不能」の理由としてあげた名寄せプログラムとは、五千万件の記録とすべての年金加入者や受給者の記録をすり合わせ、持ち主を特定するためのソフトである。しかしこの説明が真っ赤な嘘であったことは、いまや広く知れわたっている。


 第三者機関のひとつである「年金記録問題検証委員会」(座長=松尾邦弘弁護士)は、「5千万件の記録」の一部を独自にサンプル調査した結果、数時間程度で中身の精査ができる、という結論に至っている。同委員会は、十月31日に公表した「年金記録問題検証委員会報告書」で、その詳細な内容分析も行っている。


 実は、コンピュータ上で、記録の不備が確認できる仕組みはすでにできていた。もともと名寄せプログラムは必要なかったのである。当の社保庁自身、07年12月に予定されていた同プログラムの完成を待つことなく、11月から5千万件の中身の精査に着手している。サボタージュであったことを自ら認めたようなものだ。


(中略)


 政権を欺き、現場職員を犠牲にしてまで年金官僚たちは、何を目論んでいるのだろうか。

 自民党関係者は言う。

「五千万件の中身の精査をまじめに行えば、対処のしようがない問題が次々に明らかになる可能性がある。すでに名前や生年月日などのない記録が524万件あり、それ以外にも記録の不備のあることがわかっている。だから、着手をなるべく後回しにしようとしたのです。三月をめどに終了予定の名寄せスケジュールがスタートしたあとなら、不備記録の存在があらたに明らかになってもうやむやに処理できると踏んでいる」


 この人物は、そもそも年金記録には、この5千万件以外にも多数の不備記録が含まれていて、データベースとしての体をなしていないと続けた。つまり、一年や二年で片付く問題ではなく、十年単位のプロジェクトとして位置付けなければならないということになる。


(中略)


 要するに年金官僚たちは、年金制度にとって最も重要な記録に手の施しようのない欠陥があることを早くから認識しながら、何の手も打ってこなかったわけだ。


(後略)

引用文献: 文芸春秋2008.1月号 「 総力特集暴走官僚 」