翠江堂のいちご大福

まちがいなく東京で一番美味しい



それは八丁堀にある翠江堂の「 いちご大福 」 。いちご大福のために栽培しているいちごを、あっさりめの小豆のこしあんでさらりと包み、とろけるような薄いお餅にくるんでいる。2、3粒入った少し塩味のきいたエンドウ豆がアクセントとなり、とてもしあわせな味だ。

大粒で新鮮ないちごはシャリっとした食感がみずみずしい。かぶりつくと、じゅわ〜と果汁がこぼれ出る。この甘くて酸味のはっきりとしたいちごを包むこしあんがまた絶品。いちごの甘さと喧嘩しない、少し遠慮した甘さで小豆の風味が生きている。そしてこの2つを包むお餅は、ふわっととろけるように口のなかで溶ける。至福の三位一体である。

今頃から春の旬にかけては大粒のいちごが1つ入っている。旬を過ぎるといちごの粒が小さくなるため、こっそりと2つ入れてくれるのも奥ゆかしくてうれしい。


6月に訊ねたとき、お店が取り壊されているのを見て愕然とした。移転先の案内もなく、ついに店をたたんで土地を売り払ったのだとばかり思い込んでしまった。


ところが12月5日から再開していると聞き、ソッコーで買いに行きました。
やっぱり、うんまい!



もう10年も前になるだろうか、
娘を連れて買いに行くと既に売り切れていた。そのとき、娘が今にも泣き出しそうになっていたからだろう。女将さんが、「 ごめんね〜。いちご大福に入れるいちごがあるから、これをあげようね 」と、いちごを5粒好意でくださった。娘の小さな手からこぼれ落ちそうなほどの大粒のいちごは、これまでのどんないちごよりもおいしかった。


翠江堂のいちご大福を食べたくなるたびに娘が話す、懐かしい想い出である。