顧客である前に人間

モンスターカスタマー出現。「 お金を払っているのだから何をしても許される 」と考える人たち。お金を払ってさえもいないのに「 自分は客なのだからあなたより立場が上 」という意識。


このところお客様にサービスする方々は大変だなといろいろな場面で思い知らされる。特に有名企業の社員の方々は可哀そうである。世間は「 顧客中心 」、「お 客様は神様 」ということで些細なミスも許さなような風潮がある。少しでも公共関連の仕事をしている会社の社員の方々も大変である。何かの不祥事やミスがあると「 ほら見たことか」、「 血税を使っているくせに 」などと、鬼の首でも取ったような態度をとる世間なのだ。


社員にしてみれば、たまたま就職した会社が大手企業だったり、公共サービスを請け負ったりしているだけのことにすぎない。それは単に労働の対価を受け取る仕事であり、物乞いでもなく奉仕でもない。労働の尊さは労働する場所とその労働を必要とする相手によって変わるものではない。
消費者に広く知られるブランドを持つ著名企業、公共サービスを提供する信頼のある企業は自ら襟を正し、平均以上の品質を保つべきではある。しかし、消費者としての個人がそこで働く労働者としての個人に普通以上に厳しい態度を取るのはどうかと思う。ましてや、些細なことでマスコミを巻き込んで大騒ぎしたり、理不尽な要求を押し付けたりする行為はまったくアンフェアそのものだ。


寛容さを失うと人間は勇気も失う。なぜならば「 勇気 」とはフェアのために何かを失っても構わない「 寛容 」だから。世論に敏感な組織と個人に厳しい人間に限って、世間を気に介さない組織と個人には弱い。有名な航空会社の「乗務員」に必要以上に厳しい態度を取る人は、横柄な個人タクシーの「 乗務員 」にはきっと何も言わないだろう。大手企業や公共サービスの仕事をする方々のちょっとしたミスにも過剰に反応する社会であっても、態度が横柄で乗車拒否する個人タクシーには全く無力なのだ。


せめて自分と自分の子どもには言い聞かせたいと思う。「 顧客である前に人間であり、人間の価値は対等である」と。