職場のイヤな奴


「 クソッタレ 」な奴がいると、職場での人間関係は悪くなり、組織のパフォーマンスは低下し、そして経営にダメージをもたらす。クソッタレは標的にした部下や同僚にダメージをあたえるだけではない。彼らの卑劣な行為を目にした社員、家族、友人、さらには単に話を聞いただけの知人にまでネガティブな波及効果をおよぼすのだ。


「 恐怖がその醜い頭をもたげるとき、人々は自己保身に走り、自分が所属している組織をよりよくするための自発的な努力をしなくなる 」( デミング博士 )
人は酷使されていると感じたり、自分の仕事に満足できないとき、それが組織のためになるとわかっていても、余分な仕事をしたがらない。
虐待的な上司を持つ社員の離職率が非常に高いことが追跡調査から明らかになっている。相手が自分よりも強い場合と弱い場合でどう態度を変えるかを見れば、その人物の人間性ははっきりとわかる。


哺乳類の集団において、序列の高い者と低い者の社会的距離が小さく、その距離をより小さくしようという努力がなされている場合、序列の高いメンバーがゲス野郎のようにふるまう傾向は低くなる。
優良企業といわれるIDEOやゴールドジムサウスウエスト航空ジェットブルー航空は、社内に「 クソッタレ 」が増殖するのを防いでいる。クソタッレを採用しないことが一番なのだが、まちがって採用した場合はすぐにクビにすることだ。一人のクソッタレは何人ものクソタッレを連れてくる。人は環境の動物なのである。クソッタレな環境はまともな人間でさえもクソッタレにしてしまう。
ジェットブルー航空が運航をはじめた最初の一年間、従業員をクビにした能力上の理由でいちばん多かったものは、「 社風への適応性の欠如 」であった。
クソッタレな顧客を遠ざけているサウスウエスト航空では、「 うちの従業員に虐待を働いたり、嘘のクレームをでっちあげたりした乗客には、接客部が手紙を出し、今後は弊社を利用しないでほしいと頼むこともあります 」と言う。


しかし、メンバーにクソッタレがひとりかふたりいたほうが、まったくいないよりもグループ内の環境がアップする傾向がある。他の者が 「 私はあんなふうには絶対になりたくない 」と強く自覚するからだ。


きっちり結果を出す有能なクソッタレは、毒を吐きだす時と場所をわきまえているようだ。標的を十分にビビらせたら、すぐにクソッタレスイッチを切るのである。
きっちり結果を出す有能なクソッタレになるには、

  • 権力を手に入れ維持するためには、他人に対して怒りを爆発させる。
  • ライバルを打ち負かすためには、卑劣な行為や威嚇をして怖気づかせる。
  • 部下のやる気を起こさせるためには、普段は卑劣で厳しい態度を取っていても、たまに励ましや褒め言葉をかける。
  • 自分の起こしたトラブルの後始末や周囲の人から好意を引き出すには、パートナーには自分と正反対の良い性格の者を選ぶ。

引用文献: 「 あなたの職場のイヤな奴 」 ロバート・I・サットン 著、 講談社