絲印 ( いといん ) 煎餅

秘蔵の印



絲印とは、室町時代以降中国からわが国に輸入された生糸に添付されていた小さな鈕( ちゅう )のついた銅印のこと。輸入生糸の一荷には必ず銅印一個をつけ、わが国に到着した後その斤量をあらため、受領証書にこの印を押して取引の証とする風習があった。
印面も形もそれぞれ異なり、印文には、弄花吟月、愛春惜秋等の風流語や、謎のような文字、絵、文様などが風雅に表されていた。 鈕には人物、動物等を鋳出し、意匠も種類も雑多で、明時代の精巧な鋳金術をそのままに、小さいながら当時の工芸美術品の代表的なものであった。
太閤秀吉もこの絲印を愛し、公文書に押す自らの朱印もいくつか秘蔵していた絲印のなかから珍品を用いたと伝えられている。


万延元年の創業の播田屋は、鶏卵、砂糖、小麦粉で薄く焼き上げた煎餅に、表面に絲印の印影を焼きつけた絲印煎餅の老舗。サクッとしてほのかな甘味の煎餅に風雅を感じる。