呼子鳥

万葉の頃



呼子鳥は不思議な鳥とされてきた。秋の深山に何が鳴いているか分からないが、いかにも我が子を呼んでいるような声がする。実はこだまする鹿の鳴き声なのだが、万葉の人はこれを「 呼子鳥 」と風雅に名づけたそうな。


松江にある風流堂の「 呼子鳥」は、今の季節にしか味わえない秘伝の銘菓である。旬の栗だけで少しゆるめに練り上げたきんとんを皮むきの小豆餡で薄く包み、うずくまる鹿に仕立てたもの。
栗きんとんと皮むき餡の二つの上品な甘さが口の中で溶け合い、馥郁とした栗の香りに秋の深山の風情を感じる。まことに格調の高い味が醸し出される。