不寛容

人は不寛容である。
生物に個体差があるのはあたりまえである。頭の回転が早い者もいれば、じっくりと考える時間が必要な者もいる。器用な者もいれば細かなことが苦手な者もいる。背が高い者、低い者、皮膚の色が白い者、黄色い者。それは単なる差異にすぎない。


だが、人は頭の回転が遅い者を揶揄する。感覚や運動機能に障害のある者を蔑む。自分と異なる信念を持つ者を嫌悪する。皮膚の色が違うだけで憎悪の対象となる。
人よりも知能が低く、人の言葉を喋らず、人とは全く異なる姿をした犬や猫や鳥や爬虫類でさえも愛せるのに、なぜ人同士では愛せないのか。


不当な理由で他者を傷つけることは間違った行為である。
憎しみよりも愛の方が、不寛容よりも寛容の方が、争いより協調の方が、好ましい。でも、人は、そのあたりまえなことを見失う。




引用文献:「 アイの物語 」 山本弘 著、角川書店