志本主義の時代

島根県益田市( 人口 53,126人 )にその自動車教習所 「 益田ドライビングスクール 」 はある。運転免許を取りにきた茶髪にピアスの現代っ子を、礼儀正しくボランティア精神に富んだ若者に変えてしまうという業界では有名な自動車教習所である。

教習生は日本全国から集まり、2週間の合宿で免許を取得する。年 6,000 人の卒業生( 毎年増え続けている)を輩出する。自動車教習所の年間終了者数は全国平均で約 1,000人。6倍である。

マーケットが縮小し続けている外部環境要因をものともせずに教習生を集めている秘密は、その経営理念にある。創業者で現在会長の小河二郎氏は 「 21世紀は心を大切にし、志を持った企業だけが生き残る 『 志本主義 』 の時代である。」 という。


益田ドライビングスクールから帰ってきた子どもたちは、気持ちよく笑顔で挨拶するようになっている。進んで掃除や整理整頓をする。他人の靴まで揃えるようになる。人への思いやり、気配りができるようになっている。
「 なぜ 」 「 いったいわが子に何が起きたの 」 と、驚く親たち。子どもたちは異口同音に 「 挨拶をすると気持ちがいいことを知った 」 「 トイレの掃除をしたら心も洗われた 」 「 友だちがたくさんできた 」 と語る。

若者のモチベーションの向上、地域通貨の活用など自動車教習所の既成概念が覆される。


引用文献:「 全国から人が集まる不思議な自動車教習所 」 小河二郎 著、PHP研究所