鯛は頭から腐る。会社も頭から腐る。


上場企業は来年4月に施行されるJ−SOX法( 金融商品取引法における財務報告に係わる内部統制 )対応に大わらわである。

どこの会社へ行っても聞かされるのがSOX法対応への大変さと不満。いままでやってきたことが否定され、こと細かく文書で証明しなければいけないことへの疲労感。業界ではあたりまえのことが、アドバイザー(彼らは施行後には監査する側にもなる )へ伝わらないことの徒労感。もっと勉強してこいよ、といいたくなるほどの理解力のなさ。

儲かりすぎてうれしい悲鳴を上げているのは、アドバイザーとなっているコンサルティング会社ばかりなり。なんたって人手不足を理由に言い値で契約が取れるのである。一人あたり一日につき数十万円という契約だから、経験がない人間でもかき集めて来て投入するといった業者もあるそうな。企業側からすると、お金を払って仕事の内容を教えてあげているだけということも起きる。アドバイザーといいながら、その業界のことなど判っていないのである。全くいい商売だ。


そもそもSOX法の前提は性悪説。「 人間は悪いことをするためにあらゆる努力をするのだから、そんなことをさせない統制の仕組みを作って、経営がきちんと監視しておくべきだ 」 という考え方である。アメリカならそうなのかもしれない。でも、日本の会社の現場モラルはそんなに低くはないぞ。

日本の会社は現場の力でこれまでなんとかもってきたのだと思う。経営トップが2代目のボンクラとか、自己保身しか考えないサラリーマン社長であったとしても、現場がしっかりしているので倒産しなくてすんだような会社がたくさんある。そんな現場のやる気を削ぐのがSOX法である。そういった現場に対して「 あんたたちはどんな悪いことをするかもしれないので、いちいちチェックして問題がないという証拠を残しますよ。」 と言っているわけである。そしてそこでは決められた手順どおりにしか仕事はできない。現場の知恵で改善することは 「 悪 」 なのである。これは日本の企業力を損なおうとするアメリカの陰謀なのではないかと思ってしまう。現実を何も知らない、自分では何もやったことのない役人や知識人たちが机上の議論で決めるとこうなる。

大手企業が決算を誤魔化したり、法律を破って知らん顔しているような、経営力の低下した日本企業の現状から考えると仕方はないのかもしれないが、それは現場を責めるべきではなく、そいうことをさせる経営者を責めるべきではないのか。


鯛は頭から腐る。会社も頭から腐る。