かす巻き

ザラメのジャリジャリ感を楽しむ


カステラの底に残るザラメ、妖しいおいしさである。
関東へ来てがっかりしたのが、このザラメのところをわざわざこそげ落としてカステラを食べる風習があるということだ。昔職場で、お客様からいただいたカステラが切り分けられて配られたのだが、ついてたハズのザラメがないことに気付いた。配ってくれた女性に訊ねたところ「え〜っ、あんなもの食べるんですかぁ!」と驚かれたときの衝撃が忘れられない。


「 かす巻き 」は、ザラメ好きを心から堪能させてくれる。なんたって底だけでなく、全身まんべんなくザラメが振りかけられているのだから。

かす巻きは対馬の伝統的なお菓子。約350年前の江戸時代、参勤交代で江戸から帰った藩主の無事を家中で慶び、長旅の疲れを癒すために考案されたといわれている。カステラ生地の皮でたっぷりの黒餡や白餡を巻き、ザラメをふりかけて作る。あんことカステラとの相性が良く、ただひたすら甘い。

甘いのが贅沢品であった頃の伝統を引き継ぐ、庶民の一品である。