自分たちが変わる


コンサルタントや大学の先生たちのセミナーや勉強会に随分出たけれど、明確なことを言ってくれる人は一人もいなかった。みんな同じことを言うだけなんです。欧米ではどうだとか、どこの会社はどうだとか、どこがすごい活動をしているとか、そんなことばかり言っている。

先生たちは成功したどこかの事例しか言わない。あそこはあんな形でうまくいったと言う。うまくいったのを真似することから始めるのもいいけれど、自分のところと他のところとじゃ、企業風土や企業文化が全然違う。

あっちの話、こっちの話をつじつま合わせて、簡単に言えば、イギリスをアメリカに置き換えているだけなのです。方法論は全部同じ。いかに先生たちの考え方が実体と合っていないのかが分かる。

役社員の意識があがらないのに、コンサルタントはみんなよその成功事例の話をする。どこそこの会社は、どこそこの活動は、大成功したという話が出てくる。そんなことは百も承知です。でもそんなことをすぐにやりましょうと言われても出来るわけがない。


「みなさんたちにも、ああいうふうにやれば地域社会に密着した素晴らしい活動が必ず出来るはずです 」。バカヤロウ、じゃあ、お前がやってみろよと、私は思う。言うだけでやれるかというと、やれっこないんです。というのも、成功した事例を知っているというだけで本人が取り組んだわけでもなんでもない。活動を形にしていく過程の熱が分からない。分からないけれど枠組みだけは知っているから、それを押し付けてくる。一番大事なプロセスがない。


本当にCSRを実践するにはどうすればいいか。会社の人たちを本気でやる気にさせ、「まずとにかく自分たちが動いてみようじゃないか 」という気持ちにさせることなんです。ゼロからやる気をもつところへ行くまでの過程が一番大切になってくる。やる気をもった人は自分で勉強するんです。


CSRとは何なのか。寄付だ、社会貢献だ、ボランティアだ。そういう考え方もあるかもしれない。でも、CSRとは何かといえば、私は自分たちが変わることだと思う。自らを変えていって、世の中に、社会に、地域に貢献していく。自分たちの社会を、これからの世の中を、自分たちの力で活性化させる。生き生きと暮らす。楽しく暮らす。
だから、金の切れ目が縁の切れ目になる活動は、CSRにはつながらない。血が通うか通わないかは、とても大切なことなんです。お金を使った活動はお金が増えない限り広がらない。お金で雇った人は次には来ない。だけど、人と人のコミュニケーションは、楽しければほうっておいても広がっていく。


私は会議でもどこでも辛いことは絶対に喋らない。「 面白い、楽しい 」と自分が思っていることだけを言う。聞いた人は、入れてもらおうかという気になる。

「 こんな大変な仕事があるけれど、誰かやる人、手を挙げてくれませんか? 」と言ったって、マゾじゃあるまいし、私がやりましょうなんて手を挙げる人なんかいるわけがない。「 面白いから来てよ 」と言ったら、やってみようかなという気になる。そうなんです。


日本人はボランティアというものを取り違えている。「 辛いことにもかかわらず頑張っている 」人たちは立派な人だと言われても、本人たちはなかなか長続きしない。
楽しくて、わくわくして、「 やりたいやりたい 」、「 面白い面白い 」と言っていれば、「 そんなに面白いのだったらオレも入れてくれ 」と言うだろうし、本人が面白ければ長続きするでしょう。

楽しいからやる、面白ければ増える、つまらなければ減る。シンプルなんです。