水不足な世界

これから水紛争が頻発しそうな地域はどこか。水資源の使用量が世界の他の地域と比べて圧倒的に高く、しかも使用量が急増しているアジア地域である。
人間が利用しやすい河川や湖沼の水は地球の淡水の0.3%。灌漑のための水の大半は地下水を汲み上げることで供給されるが、その結果、世界中で地下水の水位の低下や枯渇が懸念されている。
地球温暖化が進めば、今世紀中に氷河や積雪などに貯蔵された水が減少するため、これらの利用可能水量も減少する。世界平均の1人1日当たりの生活用水使用量は約170リットルとされるが、国によって大きく異なり、米国では約500リットル、日本は230リットル、中国やタイでは約50リットルだ。このうち人間が1日に飲む水の量はせいぜい2〜3リットルに過ぎない。


あまり知られていない事実だが、世界には「ウォーターバロン( 水男爵 )」と称される圧倒的な力を持つ3つの水企業が存在する。フランスのスエズ社、ヴィヴェンディ社、およびドイツのRWE社が保有するイギリス本拠のテームズ・ウォーター社である。
日本の工業用水の使用量は、1965年179億トンから2001年の540億トンへと3倍に拡大したものの、補給水量( 新たに工業用水道、地下水、河川水などから採り入れる水量 )は114億トンから116億トンとほとんど増えていない。これは、再処理した水の量が65億トンから424億トンと6.5倍も拡大しているためである。代表的な水処理関連プラント企業は、オルガノ栗田工業、ササクラ、荏原など。


さまざまな資源はいまや市場で安価に調達できる「 市況商品 」ではなく、資源国が自国の利益のため政治的に利用する「 戦略物資 」となった。注目すべきは、ここ数年、世界の穀物の期末在庫率が急速に低下しているという事実だ。在庫が薄いということは、それだけ国際穀物市場が異常気象や水不足やBSEや鳥インフルエンザなどの感染症といった突発的な事態による需給の変動に敏感になっており、価格の上昇が起きやすい状態にあることを示している。
食糧自給率が極端に低い我が国にとって、世界の水不足は実は深刻な問題なのである。



引用文献 : 「水戦争―水資源争奪の最終戦争が始まった」 柴田明夫 著、角川・エス・エス・コミュニケーションズ