伝えたかったこと


松下幸之助が語りかけてくる。
仕事で成功するための考え方や、生きがいを見つける方法などの語りから、「 経営の神様 」と呼ばれた、人心を掌握した経営者の根本が伝わってくる。

野球の選手が勝っても泣き、負けても泣くというような、全身全霊を打ち込んでいるというようなその姿が、皆さんの仕事の面に現れたならば、私は、同じように天下の耳目を集中することができると思うんです。そのあなたの仕事が発展しないことはない、そのあなたの仕事によって多くの人が幸せにならないことはないと思います。


自己認識ということが、個人が世の中に立っていくにおいて、いちばん大事なことだと、私は思うんです。そういう自己認識というものができたならば、決してその人は失敗しない。


また毀誉褒貶といいますか名誉といいますか、あるいは利欲と申しますか、そういうことに動かされないだけの、そこに信念をもつということが必要やないかと思うんです。いわゆる成功というものがあるとするならば、それがほんとうの成功の道だと思うんです。そうすると個人は、仕事のいかんにかかわらず、十分生きると思うんです。生きるから、その仕事を通じて、社会に貢献することもできるし、また自分のためにもなるし、そこに過ちが起こらずしてすむと、こういうように思うんです


いちばんいい方法は、相手も傷つけず自分も傷つかずして、そしてわが主張を相手に入れる。


数字さえあげればいいんだということが許されるかどうか。私はういうことであれば、むしろやらないほうがいいと思うんです。そんなことをして、松下電器が繁栄して何が得られるか。われわれの人間としての目的に反すると思うんです。


少々高かったけども尊い体験だと、こう解釈して、そしてそこに心をひらく人は、私は非常に後日進歩する人で成長する人だと思う。


われわれの地位、お互いの地位、責任というものは、わがために存在するものじゃございません。全部が社会の要望によって生まれてきているものであります。


全部わがためということを捨ててしまえとは、私は申しません。けれども、半分はわがためであり、わが地位であるが、半分は世間の要望のために生まれた地位であり、仕事であるというように解釈しなければ、社会性というものがなくなる。


引用文献: 「 仕事で大切なこと 」 松下 幸之助 著、PHP研究所 刊